博士になったら、だれとかの娘をやるとかやらんとか云うていましたから、そんな馬鹿があろうか、娘を貰うために博士になるなんて、そんな人物にくれるより僕にくれる方がよほどましだと云ってやりました よって三面攻撃は起らぬと極める。 その熟練と器用なやり口にもちょっと感心した。 幸にして苦沙弥先生門下の猫児となって朝夕虎皮の前に侍べるので先生は無論の事迷亭、寒月乃至東風などと云う広い東京にさえあまり例のない一騎当千の豪傑連の挙止動作を寝ながら拝見するのは吾輩にとって千載一遇の光栄である。 考えれば分ると思っているらしい。 多々良君の頭の後部には直径一寸ばかりの禿がある。 　細君の枕元には四寸角の一尺五六寸ばかりの釘付けにした箱が大事そうに置いてある。 すると爺さんがせっかくの御客さまだから蛇飯でも炊いて上げようと云うんです。 奥さん近頃は女学生が堕落したの何だのとやかましく云いますがね。 奥さんも有んなさるか 泥棒！と主人は胴間声を張り上げて寝室から飛び出して来る。 この天気の好いのに、うちにじっとして――奥さん、あれじゃ胃病は癒りませんな。 主人は芋坂の団子を喰って帰って来て相変らず書斎に引き籠っている。 たまの日曜だもの、あなた